中学生向けに高専入試について解説。卒業後の進路(編入学、就職)や学生生活についての記事を掲載。

JABEE(日本技術者教育認定機構)は不要!

JABEE(日本技術者教育認定機構)とは? 

 日本技術者教育認定機構(JABEE:Japan Accreditation Board for Engineering Education)とは,1999年11月に設立され,日本の教育の質を高めることにより,国際的にも通用する技術者を教育し,社会と産業の発展に寄与することを目的としている非政府団体です。JABEEは,高等教育機関(大学・高専)における教育プログラムの認定を行っています。ここで,プログラムは高専では学校全体として組むところが多く,大学は学科ごとに組むことが多いようです。
 認定された教育プログラムを修了すると,技術者第一次試験を合格と同等であるものとみなされ,技術士法に基づく技術士補になる資格が与えられます。注意しなければならないのは,高専5年間を卒業して仮に就職などしたとすれば,技術士補になる資格は与えられず全くの無意味だということです。この資格を得るには,高専卒業後に専攻科でさらに2年間勉強するか,JABEEに認定された大学の学部に編入し卒業しなければなりません。
※ 技術士とは,技術士法に基づく資格であり,国家試験(技術士一次試験,技術士二次試験)を合格した後,登録した人に与えられます。これは,科学技術に関する高度な専門的応用力を備えていなければなりません。技術士補は技術士を補助する人に与えられ,技術士一次試験を合格するか,JABEEプログラムを修了した後,登録すれば技術士補になることができます。
→ JABEE(日本技術者教育認定機構)公式サイト

JABEEの恩恵を受けられる人はほんの一部

 先に述べたように,JABEEに認定された高専を卒業しても,その後専攻科等を卒業しなければその個人は,JABEEの利点である「技術士補になる資格」が与えられません。結局,JABEEの恩恵を受けられるのはほんの一部(20%程度)の 学生だけです。それ以外の学生には「百害あって一利なし」です。

さらなるJABEEの問題点

■ JABEEの導入により,合格点(いわゆる赤点)が50点から60点に変更され,これに伴い留年(進級できないこと)や退学者の増加が見込まれる。
■ 上のように点数上の合格ラインが厳しくなったため,留年・退学等を防ぐために,むしろ定期試験が簡単になった傾向がある。例えば,導入前まで平均点が55点というような教科が,JABEEの導入後,試験内容のレベルを下げ,平均点を70点にすることで学生を合格させるなどというもの。(実際に管理人が受けたテストでも,過去[先輩]のテストより簡単になっていたものは半分以上と感じられました。また,試験を簡単にしたことを明言した先生も何人かいます。)。
■ さらに,JABEEの書類作成等の業務が増加するこで教員は忙しくなり,書類作成ばかりに時間がかかり,本来優先すべき学生への対応(授業計画,プリント配布,時間外の質問への対応) および研究の質が低下する場合がある。
 ここで,2よりも3の問題の方が深刻で,3の問題が管理人の高専では多く見られます。定期試験だけで全てが決まるわけではありませんが,JABEEが定期試験の点数を重視している以上,このように試験レベルを下げるなどしては,本来の目的とずれてしまいます。


管理人のJABEEに対する考え (私は,現状のJABEEには反対しています)

 まず言いたいのは,JABEE導入により教育のレベルが向上するどころか,結果的に低下してしまうのではないかということです。学生の質が上がることにより定期試験の点数が上がれば,それは良いことです。しかし,実際には試験内容を易しくして平均点をあげているのが実情です。これは,学生・教員ともに認めて欲しいと思います。これは,深刻な問題と受け止めるべきで,なんらかの措置を早急に講じる必要があると思います。
 次に,学校として試験の点数を上げることに重点を置きすぎているのではないか,と感じられます。そもそも,教育は一元化できるものではないと思います。試験の成績が芳しくなくても,他の事で長けていることはしばしばあります。偉大な発明・発見をした人は必ずしも試験の成績が良かったというわけではありません。確かに,試験の成績は良いに越したことはありませんが,それだけで将来技術者としての優劣を決めるのは少し安直ではないでしょうか。試験以外のことにもより目を向けて欲しいと思います。
 また,学校「全体」として認定し,それぞれ「個人」に資格を与えるのも難しいと思います。個々の学生が同一のレベルであるわけがありません。学生の学力レベルにはばらつきがあるのは当然です。しかし,学校側としてはなるべく学生を留年あるいは退学させたくないのが本音でしょう。本来ならばJABEEの認定を受けるに当たり,ある学力レベルに達していない学生は,問答無用で不合格にしなければなりません。しかし,実際には試験を簡単にするなどして本来ならばレベルに達しないうちに合格させることもあると思います。 学生もいわゆる一夜漬けなどをしてしまい,その科目が本当の意味での修得ができていない場合が多く見られます。このことを踏まえると,JABEE認定プログラム修了生が技術士一次試験合格と同等の知識を持ち合わせているかというと疑問です。
 最後に,JABEEの趣旨は日本の科学技術の教育レベルを高めるという非常に良いものであると思います。しかし,現状ではたくさんの問題があるように私には感じられます。特に,試験のことに関しては一時しのぎに過ぎないように感じられます。まずは,これら問題に目を向けることが大切だと思います。

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